●「アクセントの核」とは
高低で変化をつける日本語のアクセントにおいて「肝」となるのが、アクセントにおいて、音を高く表現するポイントです。これを「アクセントの核」といいます。これは、まさに「アクセント」そのもののことです。
ところがアクセントの核については、非常に多くの人が大きな誤解をしていますので、ここでまず注意喚起をしておきます。
アクセントの核とは、決して「高く上がった音」のことではありません。一語の中で音が下がる時の、「下がる直前の音」のことをいうのです。
「アクセントの核」の基本ルール(1)
「アクセントの核」とは下がる直前の音である
実はアクセントにおいて最も重要なのは、上がることではなく「下がること」なのです。そして、下がる直前の「最も高さを感じる音」を「アクセントの核」と呼ぶのです。
では、アクセントの角種類を例に、具体的に説明していきましょう。太字がアクセントの核です。
■頭高の「アクセントの核」
頭高の単語は、1音目が高く、2音目以降が下がるのでしたね。ですから当然、1音目が「アクセントの核」です。上がっている音は最初の1音だけですから間違えようがありませんね。
カ\ラス
ぶ\んがく(文学)
お\やこ(親子)
■尾高の「アクセントの核」
尾高の音は、助詞が下がってつくのでした。ですから、下がる直前の音はつねに、単語の最後の音です。
アクセントの核を「高く上がる音」と誤解していると、上がった2音目を「アクセントの核」だと思ってしまうのが尾高です。くれぐれも間違えないでください。
お/とこ\が(男が)
な/かま\が(仲間が)
お/とうと\が(弟が)
■中高の「アクセントの核」
2音目で上がってから1音で下がる中1高の場合は簡単です。高い音は1音だけですから、間違えようがありませんね。
あ/お\い(青い)
ゆ/き\ぐに(雪国)
ちゃ/わ\んむし(茶碗蒸し)
では、次の例はどこが「アクセントの核」でしょうか?
に/ほんじ\ん(日本人)
これは中3高の言葉です。つい最初に上がった音が「アクセントの核」と思いがちですが、「下がる直前」の音なのですから、上がっている音の3音の最後の音が「アクセントの核」です。
に/ほんじ\ん(日本人)
以下の言葉も同様です。
こ/くごじ\てん(国語辞典)
そ/れとな\く
■平板の「アクセントの核」
最後に、平板の言葉の具体例を示しますので、どこが「アクセントの核」か考えてみて下さい。
ぎ/んざ ̄で(銀座で)
せ/んもんか ̄が(専門家が)
あっ/とうてき ̄に(圧倒的に)
いかがですか?どこまで行っても「下がり目」がないので、悩んでしまわれたのではないでしょうか。
実は、これは少し意地悪な出題でした。平板の場合はもちろん2音目は上がりますが、下がる場所がないので、「アクセントの核」は「ない」のです。
つまり平板とは、音の「下がり目」=「アクセントの核」がないから「平板」というのであって、決して「すべての音が平坦である」わけではないのです。「上がり目」に注目してしまうと、2音目が上がるのになぜ「平板」というのかわからなくなりそうですが、「下がり目がない」と考えれば納得できますね。
「アクセントの核」の基本ルール(2)
音の「下がり目」=アクセントの核が失われることはほぼない
このようにアクセントで大切なのは、あくまでも「音の下がり目」なのです。
初めてアクセントを学ぶ方は、このルールをしっかり覚えて下さい。あげるべき音もきちんと上げないとメリハリのない、何を伝えたいのかよくわからない「心のない」言葉になってしまいがちです。「声に出して読む」ことに慣れていない人も、きちんと「上がり目」を意識すれば、「下がり目」も下げやすくなります。
1音の上げ下げが正しくできるようになれば、とりあえず、わかりやすい、はっきりとした読みという第1ステップは完了です。
●特殊音の「上がり目」と「下がり目」
ここで、特殊音のアクセントについて補足しておきます。
促音の「っ」、撥音の「ん」、長音・重母音の「ー」「う」「お」「い」はそれだけで1拍(1音)と数えます。例えば「百歩」(ひゃ・っ・ぽ)は3拍、「インターネット」(イ・ン・タ・ー・ネ・ッ・ト)は7拍です。このような特殊音の前にアクセントの「上がり目」や「下がり目」があるとき、これらの音をどう言えばいいのかは、迷うところでしょう。
■特殊音の前に「上がり目」があるとき
どの特殊音の場合でも、「上がり目」の音と、その次の特殊音の2音を「まとめて」次の音で上げるように発音しないと、かなり不自然になるのです。
たとえば「葉っぱ」(は/っぱ)は、「っ」では1拍分ためているだけでは音は出ず、その後ろの「ぱ」の音でいきなり上がる感じです。「は」と「っ」は、ひとかたまりのイメージです。
「肝心」(か/んじん)という言葉なら「ん」だけを上げるというより、その前の「か」をまとめて「かん」というひとかたまりにして「じ」で上がっていくように言うほうがナチュラルですよね。
「コーヒー」はアクセント上は「コ/ー\ヒー」と記されますが、実際に発音するときは「コー/ヒ\ー」のように「コー」と2音まとめて上がっていくように言わないと、かなりわざとらしく聞こえてしまいます。
■特殊音の前に「下がり目」があるとき
「下がり目」の場合は、基本的には、アクセント記号通りに言います。(平板と尾高は単語内に「下がり目」がないので、考える必要はありませんね。)
ただし、「頭高の長音」に限っては、上がり目と同じように、2音をまとめ気味にして下げる感覚で言うほうがナチュラルです。たとえば「シャーベット」はアクセント上は「シャ\ーベット」ですが、言うときは「シャ」と「ー」をまとめて「シャー\ベット」と言うほうが自然ですよね。
しかし、同じ長音でも中高の場合は、2音まとめてしまうと、アクセントそのものが変わってしまいます。たとえば「コントロール」は「コ/ントロ\ール」と言うアクセントですが、実際に話すときは「上がり目」は「コン/」とまとめて上げ、「ロ\ール」はアクセント通りに下げます。もしまとめて「ロー\ル」と言ってしまうと、完全に訛って聞こえます。
なお、促音(「っ」)は音がありませんので、「っ」のところで下げると言うよりは、その次の音でポンと下がる感覚です。この「無音で下げる」のが苦手な人が多いので要注意です。
特殊音の「上がり目」と「下がり目」についてのルール
(1)「上がり目」はつねに次の音と2音まとめて上げる
け/っこん(結婚) → ケッ/コン
こ/おり(氷) → コー/リ
せ/いさく(制作) → セー/サク
し/んじん(新人) → シン/ジン
(2)「下がり目」は基本的にアクセント通りに下げる
(3)頭高の長音のみ「下がり目」を2音まとめ気味に下げる
コ\ート → コー\ト
と\うた(淘汰) → トー\タ
せ\いか(成果) → セー\カ
(4)促音は次の音でポンと下げる
イ/ンターネ\ット → イン/ターネッ\ト
け\っこうな(結構な) → ケッ\コーナ
(「魅せる声」のつくり方/篠原さなえ より)
2016年12月17日土曜日
アクセントの基本ルール
●アクセントの種類
標準語のアクセントには「平板」「頭高」「中高」「尾高」の4種類があります。
これら4種類を「平板」とそれ以外に分け、それぞれ「平板型」と「起伏型」と呼ぶこともあります。「平板型」は音の高さが平板で、「起伏型」は音に上下の起伏があるということです。ただし、次に述べるように「平板」という言葉には、実は大きな落とし穴が隠されています。
ここまでが、アナウンサーや役者・声優を養成する学校ならとりあえず教えてくれる、もしくは教本などに解説されているアクセントの基本中の基本です。ただし勉強したことのある人はかえって「平板」や「尾高」に関して勘違いしている可能性がありますので、よく確認してください。
(「魅せる声」のつくり方/篠原さなえ より)
標準語のアクセントには「平板」「頭高」「中高」「尾高」の4種類があります。
これら4種類を「平板」とそれ以外に分け、それぞれ「平板型」と「起伏型」と呼ぶこともあります。「平板型」は音の高さが平板で、「起伏型」は音に上下の起伏があるということです。ただし、次に述べるように「平板」という言葉には、実は大きな落とし穴が隠されています。
- 平板 1音目が低く、2音目以降は高くなる。続く助詞は同じ高さ
- 尾高 1音目が高く、2音目以降は低くなる。続く助詞は同じ高さ
- 中高 1音目が低く、2音目以降は高くなり、単語の終わりまでにまた低くなる。続く助詞は同じ高さ
- 尾高 1音目が低く、2音目以降は高くなる。続く助詞は低くなる
●「平板」にだまされるな!
標準語のアクセントでは、1音目と2音目が同じ高さになることはありません。これはアクセントについて少し習ったことがある人でも意外に見落としがちな、しかし非常に重要なルールです。
アクセントの基本ルール(1)
1音目と2音目では必ず高低が変化する。
■1音目が低く、2音目が高い・・・平板、中高、尾高
■1音目が高く、2音目が低い・・・頭高
ここで注意すべきは「平板」の場合です。プロ志望の人でも、「平板」という名前にだまされて1音目と2音目を同じ高さにしていることが少なくありません。また、関西方面の人はまったく同じ高さにすることが多いようですが、標準語では「平板」でも2音目は必ず上がるものと覚えてください。
以下に「平板」の単語の例を示します。ただし、従来のアクセント記号は一般の方にはかなりわかりにくいものですので、目で見て直感的に理解できる私のオリジナル記号を使わせていただきます。
「/」は音が高くなり、「\」は音が低くなることを表します。
時間(じ/かん) 大学(だ/いがく)
見物人(け/んぶつにん)
実は「相手に意味を伝えようとしていない、独りよがりの気持ちの悪い話し方・読み方」に聞こえてしまう大きな要因が、この「平板」の言葉を、1音目も2音目も同じ高さで発音してしまうことなのです。ふだんの会話でも「自分はテンションが低い」と感じている人は、この基本ルール(1)を意識して話すと、きちんと人に伝わりやすくなるはずです。
感情を入れて読もうとしたときに、1音目をいったん下げてから2音目をあげる癖がある人が多々います。いわゆる「しゃくり読み」と呼ばれるものですが、これは絶対にやめてください。
●尾高にだまされるな
2つ目の基本ルールを紹介します。単語のあとに「は」「が」「を」「に」などの助詞がついたときのルールです。
アクセントの基本ルール(2)
単語の最後の音と、続く助詞の音は同じたかさ
ただし尾高は助詞が下がってつく
具体例をあげましょう。読みは同じ「はし」である3つの単語、「端」「箸」「橋」のアクセントの違いを見ていきます。
■「端」は平板の単語です。単独では「は/し」と読みます。「端を折る」と読むときの「はし」と助詞「を」の高低はこうなります。
は/し ̄を
「は」より「し」が上がり、助詞の「を」が「は/し」の「し」と同じ高さになっています。
■「箸」は頭高の単語です。単独では「は\し」と読みます。「箸を持つ」と読むときの「はし」と、助詞の「を」の高低はこうなります。
は\し_を
「は」より「し」が下がり、助詞の「を」が「は\し」の「し」と同じ高さになっています。
■「橋」は尾高の単語です。単独では「は/し」と読みます。「橋を渡る」と読むときの「はし」と、助詞の「を」の高低はこうなります。
は/し\を
「は」より「し」が上がり、助詞の「を」が「は/し」の「し」よりも低くなっています。
平板の「端」、頭高の「箸」では、最後の「し」と続く助詞の「を」は同じ高さです。尾高以外の単語は全て、このルールが当てはまります。しかし「橋」のように尾高の単語だけは、最後の「し」よりも助詞の「を」が下がります。
このように「助詞から見たときに」その単語の「尾」(最後の音)が高く見えるから「尾高」というのです。
「尾高」という言葉にだまされて「単語の最後の音が上がる」と覚えている人が少なからずいますが、助詞がつかなければ「端」と「橋」はどちらも「は」より「し」が上がる音です。助詞がつい他ときに初めて「端」は平板、「橋」は尾高であることがわかるのです。
●一度下がったら上がらない
アクセントにはもう1つ、重要なルールがあります。1つの単語の中で、一度、アクセントが下がれば、もう二度と上がることはないというルールです。
アクセントの基本ルール(3)
一度、音が下がったらその単語内で再び上がることはない
単語内で音が下がるのは、頭高と中高だけです。平板と尾高は、上がりっぱなしですから、ここでは考える必要はありません。
■頭高の例
む\がむちゅう(無我夢中) あ\かちゃん(赤ちゃん)
エ\ントリー シャ\ーベット
■中高の例
お/か\あさん(お母さん) お/ま\わりさん (中1高)
か/みが\かり(神がかり) ホ/ウレ\ンソウ (中2高)
そ/れとな\く つ/ばきあ\ぶら(椿油) (中3高)
お/わらいげ\いにん(お笑い芸人) さ/きおとと\い (中4高)
このように、どんなに長い単語でも一度下がったら、もう上がることはありません。なお、中1高、中2高・・・とあるのは、中高の言葉で音が上がってから何音で下がるかを表しています。中1高なら1音で下がり、中2高は2音、中3高は3音、中4高は4音
で下がるわけです。
なぜこのようなルールがあるかは、複合語の場合を考えればよくわかります。たとえば、「インターネットコミュニティ」という単語は「イ/ンターネッ\ト」と「コ/ミュ\ニティ」という、それぞれ中高の単語が合体した言葉ですが、複合語になると、
イ/ンターネットコミュ\ニティ
という中8高の音になります。そう、「イ/ンターネッ\ト」のもともとの下がり目がなくなってしまい、8音もの間、ひたすら平らになるのです。
もし、下がり目を残していたら、単に「インターネット」と「コミュニティ」という2つの単語が並んだだけの音になってしまい、複合語であることがわからなくなってしまいます。基本ルール(3)があるから、1つの言葉として認識ができるわけです。
以上がアクセントの基本ルールです。
●1音でもアクセントは違う
ひとつ、補足として「1音の単語」の場合の説明をします。
「日」と「火」(いずれも「ひ」)、「葉」と「歯」(いずれも「は」)など、たった1音で成立している場合でも、実はアクセントの種類が異なります。その単語だけでは区別がつきませんが、助詞がつくことで明らかになります。
■平板の場合
「1音で平板」の場合は、その単語の音よりも、続く助詞の音の方が高くなります。これは基本ルール(2)の「単語の最後の音と、続く助詞の音は同じ高さ」という規則に反していますが、基本ルール(1)「1音目と2音目では必ず高低が変化」して「平板では2音目の方が高くなる」という規則が、変則的に適用されたものと解釈することができます。
助詞がその前の音(単語の最終音)より上がるのは、この場合だけです。具体例をあげます。
日が(高い) → ひ/が(高い)
葉が(落ちた) → は/が(落ちた)
■尾高の場合
「1音で尾高」の場合は、その単語の音よりも、続く助詞の音の方が低くなります。1音では「頭高」との区別はなくなりますので、「尾高」ではなく「頭高」に分類される場合もあります。
火が(ついた) → ひ\が(ついた)
歯が(痛い) → は\が(痛い)
では、少しここまでのおさらいをしましょう。以下の文の太字の部分を、基本ルールに従って声に出して読んでみてください。
(1)お貸しする。(平板)
(2)岡氏は言う。(頭型)
(3)お菓子を食べる。(中高)
(4)女がいる。(尾高)
できましたか? それぞれの読み方は次のとおりです。
(1)お/かし _/ ̄ ̄
(2)お\かしは  ̄\___
(3)お/か\しを _/ ̄\__
(4)お/んな\が _/ ̄ ̄\_
ここまでが、アナウンサーや役者・声優を養成する学校ならとりあえず教えてくれる、もしくは教本などに解説されているアクセントの基本中の基本です。ただし勉強したことのある人はかえって「平板」や「尾高」に関して勘違いしている可能性がありますので、よく確認してください。
(「魅せる声」のつくり方/篠原さなえ より)
2016年12月15日木曜日
鼻濁音
ガ行音が語中や語尾にきた場合、口から呼気を出す破裂音の[g]ではなく、鼻から息を抜くやわらかい音[ŋ]で発音するのを「ガ行鼻濁音」と言い、『NHK日本語発音アクセント辞典』ではカ゜キ゜ク゜ケ゜コ゜と表記します。
最近では若い世代になるほど、鼻濁音に関心を示さない傾向がありますが、聞いた感じがやわらかく、話しぶりがなめらかに聞こえる利点もあり、この発音を身に付けたいものです。
●共通語「ガ行」鼻濁音の決まり
(1)語中、語尾のガ行音は原則として鼻濁音化します。
サカ゜ル(下がる) ヤキ゜(山羊) モク゜ル(潜る)
アケ゜ル(上げる) カコ゜(籠)
(2)「〜が」という格助詞と接続助詞は、必ず鼻濁音化します。
ワタシカ゜(私が) シマシタカ゜(しましたが)
(3)もともと清音であった語が、複合語になって連濁化した場合は鼻濁音となります。
オオカ゜タ(大型) コキ゜ッテ(小切手) クニク゜ニ(国々)
ウスケ゜ショウ(薄化粧) ココ゜ト(小言)
【例外】
語中や語尾のガ行音でも、外来語や数詞の5は原則として鼻濁音化しません。
エネルギー キログラム プログラム ゴジューゴサイ(55歳)
※ただし、外国語、外来語の中で日本語化したものや、ンの次のガ行音、外国語そのものが鼻音のものも鼻濁音化の傾向があります。
【例外の例外】
イキ゜リス オルカ゜ン キンク゜コンク゜
※数詞の「5」のうち、熟語として、なじんだものは鼻濁音化します。
【例外の例外】
シチコ゜チョー(七五調) ジューコ゜ヤ(十五夜) タメコ゜ロー(為五郎)
●その他の注意
※軽い接頭語のあとのガ行音は鼻濁音にしません。
【例】オゲンキ(お元気) アサゴハン(朝ごはん)
※擬態語、擬声語など、同じ音の繰り返しでは鼻濁音にしません。
【例】ゴトゴト ガリガリ グズグズ ガサガサ
※複合語では、結びつきの強弱で、鼻濁音化したりしなかったりします。
【例】ショーカ゜ッコー(小学校)=鼻濁音
コートーガッコー(高等学校)=鼻濁音にしない
(新版NHKアナウンスセミナー/NHKアナウンスセミナー編集委員会編より)
最近では若い世代になるほど、鼻濁音に関心を示さない傾向がありますが、聞いた感じがやわらかく、話しぶりがなめらかに聞こえる利点もあり、この発音を身に付けたいものです。
●共通語「ガ行」鼻濁音の決まり
(1)語中、語尾のガ行音は原則として鼻濁音化します。
サカ゜ル(下がる) ヤキ゜(山羊) モク゜ル(潜る)
アケ゜ル(上げる) カコ゜(籠)
(2)「〜が」という格助詞と接続助詞は、必ず鼻濁音化します。
ワタシカ゜(私が) シマシタカ゜(しましたが)
(3)もともと清音であった語が、複合語になって連濁化した場合は鼻濁音となります。
オオカ゜タ(大型) コキ゜ッテ(小切手) クニク゜ニ(国々)
ウスケ゜ショウ(薄化粧) ココ゜ト(小言)
【例外】
語中や語尾のガ行音でも、外来語や数詞の5は原則として鼻濁音化しません。
エネルギー キログラム プログラム ゴジューゴサイ(55歳)
※ただし、外国語、外来語の中で日本語化したものや、ンの次のガ行音、外国語そのものが鼻音のものも鼻濁音化の傾向があります。
【例外の例外】
イキ゜リス オルカ゜ン キンク゜コンク゜
※数詞の「5」のうち、熟語として、なじんだものは鼻濁音化します。
【例外の例外】
シチコ゜チョー(七五調) ジューコ゜ヤ(十五夜) タメコ゜ロー(為五郎)
●その他の注意
※軽い接頭語のあとのガ行音は鼻濁音にしません。
【例】オゲンキ(お元気) アサゴハン(朝ごはん)
※擬態語、擬声語など、同じ音の繰り返しでは鼻濁音にしません。
【例】ゴトゴト ガリガリ グズグズ ガサガサ
※複合語では、結びつきの強弱で、鼻濁音化したりしなかったりします。
【例】ショーカ゜ッコー(小学校)=鼻濁音
コートーガッコー(高等学校)=鼻濁音にしない
(新版NHKアナウンスセミナー/NHKアナウンスセミナー編集委員会編より)
母音の発音
●「ア」
自然な口構えで、あごを開きます。口の開きは、上下の歯の間に人差し指が一本入るくらいの大きさです。唇は丸めません。下は口の中に自然に置いたまま、あごと一緒にさげます。のどの奥の方より、出口の方を大きく開きます。
●「エ」
「ア」の口構えからあごを閉じてきて、唇をやや左右に引きます。舌は「ア」のときより前に持ち上げる感じです。
●「イ」
「エ」の口構えから、さらにあごを閉じてほとんど開きません。唇は横に引き、平たくわずかに開けます。舌先を上歯ぐきへ向けて高く上げます。舌先を上げずに、下の中ほどが盛り上がると明瞭度が落ちるので、注意して下さい。のどの奥を開いて、出口の方を狭くします。
※アエアエとエイエイを繰り返して、下の動きをつかんで下さい。
アエイを繰り返して舌の位置とあごや唇の動きを確認して下さい。
●「ウ」
「イ」の口構えからさらにあごを閉じ、五つの母音の中で最もあごの開きを小さくします。唇の両端を左右から中央に引き寄せます。しかし、唇は完全に丸めるのではなく、見かけは平らな感じにします。突き出したりはしません。下は付け根の部分をやや緊張させて盛り上げます。
●「オ」
「ウ」よりあごを下げ、唇を少し丸めます。上下の歯の間に小指一本が入る程度にします。舌は「ウ」のときよりやや奥へ引っ込める気持で、「ア」より後ろに持ち上げます。
※アオアオとオウオウを繰り返し、舌の位置を確かめて下さい。
※アオウを繰り返して、舌の位置とあごや唇の動きを確かめて下さい。
※ウとオのあごの開きの違いを確認したうえで、次に挙げたように、ウイとオエの繰り返しでイとエのあごの開きの違いも確認して下さい。
※ウイウイを繰り返してみてください。あごの開きが変わらず、唇の開きに違いがあることを確認してください。
※オエオエを繰り返してみてください。あごの開きが変わらず、唇の開きに違いがあることを確認してください。
五つの母音がそろったところで、「アイウエオ」の順に声を出してみましょう。口の開きと舌の位置が順序よくつながっていることが確認できると思います。
(NHK‐CTI日本語センター 基礎から学ぶアナウンス (あなたを磨く話しことば) /半谷進彦・佐々木端 著より)
自然な口構えで、あごを開きます。口の開きは、上下の歯の間に人差し指が一本入るくらいの大きさです。唇は丸めません。下は口の中に自然に置いたまま、あごと一緒にさげます。のどの奥の方より、出口の方を大きく開きます。
●「エ」
「ア」の口構えからあごを閉じてきて、唇をやや左右に引きます。舌は「ア」のときより前に持ち上げる感じです。
●「イ」
「エ」の口構えから、さらにあごを閉じてほとんど開きません。唇は横に引き、平たくわずかに開けます。舌先を上歯ぐきへ向けて高く上げます。舌先を上げずに、下の中ほどが盛り上がると明瞭度が落ちるので、注意して下さい。のどの奥を開いて、出口の方を狭くします。
※アエアエとエイエイを繰り返して、下の動きをつかんで下さい。
アエイを繰り返して舌の位置とあごや唇の動きを確認して下さい。
●「ウ」
「イ」の口構えからさらにあごを閉じ、五つの母音の中で最もあごの開きを小さくします。唇の両端を左右から中央に引き寄せます。しかし、唇は完全に丸めるのではなく、見かけは平らな感じにします。突き出したりはしません。下は付け根の部分をやや緊張させて盛り上げます。
●「オ」
「ウ」よりあごを下げ、唇を少し丸めます。上下の歯の間に小指一本が入る程度にします。舌は「ウ」のときよりやや奥へ引っ込める気持で、「ア」より後ろに持ち上げます。
※アオアオとオウオウを繰り返し、舌の位置を確かめて下さい。
※アオウを繰り返して、舌の位置とあごや唇の動きを確かめて下さい。
※ウとオのあごの開きの違いを確認したうえで、次に挙げたように、ウイとオエの繰り返しでイとエのあごの開きの違いも確認して下さい。
※ウイウイを繰り返してみてください。あごの開きが変わらず、唇の開きに違いがあることを確認してください。
※オエオエを繰り返してみてください。あごの開きが変わらず、唇の開きに違いがあることを確認してください。
五つの母音がそろったところで、「アイウエオ」の順に声を出してみましょう。口の開きと舌の位置が順序よくつながっていることが確認できると思います。
(NHK‐CTI日本語センター 基礎から学ぶアナウンス (あなたを磨く話しことば) /半谷進彦・佐々木端 著より)
母音の無声化
本来は声帯を振動させて発音する母音を、声帯を振動させないようにすることを「母音の無声化」といいます。
例えば、記録[kiroku]と発音するとき、[ki]の[i]は声帯が振動するのが普通ですが、期待[kitai]と発音するときの[ki]の[i]は声帯がしっかり振動せずに、口だけが[i]の形になっているのが普通です。のどに手を当てて確かめてみてください。
このように、母音の無声化は、音の結びつきの一定の決まりにしたがって、その母音の口構えだけを残して、聖地を振動させないことをいいます。ただし、ゆっくり一語一語切って発音すると無声化はしません。普通の速さで話すときに限り表れる発音現象ですが、歯切れのよさ、なめらかさなどにつながる利点もあり、共通語の発音の訓練として身につける意味があります。
●共通語の母音の無声化のきまり
(1)口の開きの小さい母音「イ」と「ウ」が無声子音にはさまれたとき、無声化します。無声子音というのは[k][s][∫][t∫][ts][h][p]です。
菊[kiku] くし[ku∫i] 月[tsuki] 薬[kusuri] (赤字が無声化する拍)
(2)無声子音のあとに続くイやウが語尾になって、しかも、その拍にアクセントがない場合も無声化します。
あります[arimasu] です[desu] 書く[kaku] 秋[aki] (赤字が無声化する拍)
(3)口の開きの大きいアやオも場合によっては無声化することがあります。主に[k]や[h]につづくアやオで、その拍にアクセントがない場合。
かかと[kakato] 九つ[kokonotsu] はかま[hakama] (赤字が無声化する拍)
●例外
(1)無声化する条件の拍がアクセントの拍と重なるとき、無声化しないことがあります。
使者[∫i∫a] 子孫[∫ison] 知識[t∫i∫iki] (赤字が無声化する拍、青字が無声化しない拍)
(2)無声化する拍が二つ続くとき、発音を明確化するために無声化しないことがあります。
聞きかじり[kikikadʒiri] 資質[∫i∫itsu] (赤字が無声化する拍、青字が無声化しない拍)
(3)語尾でも、アクセントに関係なく無声化しないものがあります。
渋谷区[shibuyaku] スパイク[supaiku] (赤字が無声化する拍、青字が無声化しない拍)
●例外の例外
(1)語尾が無声化する拍でも、その次に有声子音などの拍が続くと無声化しないことがあります。
ありますが[arimasuŋa] ですが[desuŋa] 書くもの[kakumono](青字が無声化しない拍)
(2)アクセントが来てもそのまま無声化するものがあります。
居つく[itsuku] 書記官[syokikan](青字が無声化しない拍)
(NHK‐CTI日本語センター 基礎から学ぶアナウンス (あなたを磨く話しことば) /半谷進彦・佐々木端 著より)
例えば、記録[kiroku]と発音するとき、[ki]の[i]は声帯が振動するのが普通ですが、期待[kitai]と発音するときの[ki]の[i]は声帯がしっかり振動せずに、口だけが[i]の形になっているのが普通です。のどに手を当てて確かめてみてください。
このように、母音の無声化は、音の結びつきの一定の決まりにしたがって、その母音の口構えだけを残して、聖地を振動させないことをいいます。ただし、ゆっくり一語一語切って発音すると無声化はしません。普通の速さで話すときに限り表れる発音現象ですが、歯切れのよさ、なめらかさなどにつながる利点もあり、共通語の発音の訓練として身につける意味があります。
●共通語の母音の無声化のきまり
(1)口の開きの小さい母音「イ」と「ウ」が無声子音にはさまれたとき、無声化します。無声子音というのは[k][s][∫][t∫][ts][h][p]です。
菊[kiku] くし[ku∫i] 月[tsuki] 薬[kusuri] (赤字が無声化する拍)
(2)無声子音のあとに続くイやウが語尾になって、しかも、その拍にアクセントがない場合も無声化します。
あります[arimasu] です[desu] 書く[kaku] 秋[aki] (赤字が無声化する拍)
(3)口の開きの大きいアやオも場合によっては無声化することがあります。主に[k]や[h]につづくアやオで、その拍にアクセントがない場合。
かかと[kakato] 九つ[kokonotsu] はかま[hakama] (赤字が無声化する拍)
●例外
(1)無声化する条件の拍がアクセントの拍と重なるとき、無声化しないことがあります。
使者[∫i∫a] 子孫[∫ison] 知識[t∫i∫iki] (赤字が無声化する拍、青字が無声化しない拍)
(2)無声化する拍が二つ続くとき、発音を明確化するために無声化しないことがあります。
聞きかじり[kikikadʒiri] 資質[∫i∫itsu] (赤字が無声化する拍、青字が無声化しない拍)
(3)語尾でも、アクセントに関係なく無声化しないものがあります。
渋谷区[shibuyaku] スパイク[supaiku] (赤字が無声化する拍、青字が無声化しない拍)
●例外の例外
(1)語尾が無声化する拍でも、その次に有声子音などの拍が続くと無声化しないことがあります。
ありますが[arimasuŋa] ですが[desuŋa] 書くもの[kakumono](青字が無声化しない拍)
(2)アクセントが来てもそのまま無声化するものがあります。
居つく[itsuku] 書記官[syokikan](青字が無声化しない拍)
(NHK‐CTI日本語センター 基礎から学ぶアナウンス (あなたを磨く話しことば) /半谷進彦・佐々木端 著より)
共鳴
聞き取りやすい声を作るのに、呼吸と並んで大事なのが共鳴です。声帯で振動した声を、喉の入り口のほう、咽頭や口腔、鼻腔、つまり口や鼻の中の空間で響かせ、人の声をつくります。
天井を向いて、「アー」という声を出しながら、ゆっくりあごを下げて、おへそが見えるまで顔を動かしてみてください。一番声が響くところで顔を止めてください。その角度が喉や口、鼻の奥の共鳴がよいところです。あごの角度を覚えておいてください。その顔を角度にして、声を自分の眉間にぶつけるようなつもりで声を出してみてください。よく響く声が出るはずです。
「こんにちは。きょうは、うれしいことがありました。」
例えば、こんなことばを話しながら録音をとって、自分で聞いてみてください。そして共鳴のよい自分の声を確かめてください。それまでの声より、少し高めの声のほうが、明るく聞き取りやすい場合が多いようです。
(NHK‐CTI日本語センター 基礎から学ぶアナウンス (あなたを磨く話しことば) /半谷進彦・佐々木端 著より)
天井を向いて、「アー」という声を出しながら、ゆっくりあごを下げて、おへそが見えるまで顔を動かしてみてください。一番声が響くところで顔を止めてください。その角度が喉や口、鼻の奥の共鳴がよいところです。あごの角度を覚えておいてください。その顔を角度にして、声を自分の眉間にぶつけるようなつもりで声を出してみてください。よく響く声が出るはずです。
「こんにちは。きょうは、うれしいことがありました。」
例えば、こんなことばを話しながら録音をとって、自分で聞いてみてください。そして共鳴のよい自分の声を確かめてください。それまでの声より、少し高めの声のほうが、明るく聞き取りやすい場合が多いようです。
(NHK‐CTI日本語センター 基礎から学ぶアナウンス (あなたを磨く話しことば) /半谷進彦・佐々木端 著より)
2016年12月13日火曜日
腹式呼吸
アナウンスに適した呼吸法は、横隔膜を上下させて行う腹式呼吸です。
横隔膜は胃や腸などの器官と肺や心臓などの器官を分けている膜です。この膜を上下させることで、のどに無用な緊張をしいることなく多量の息を吸ったり吐いたりできるのです。その上、横隔膜を動かす時に使う腹部の筋肉のほうが、胸式呼吸のときに使う胸の筋肉よりも意思のとおりに動かしやすいので、必要に応じてゆっくり息を吐いたりする呼吸のコントロールをしやすいのです。筋肉を鍛える腹筋のトレーニングではありません。急いでやろうとする必要はありません。以下のことに注意して、トレーニングを繰り返し、腹式呼吸をしっかり身につけることが大切です。
【姿勢】
(1)浅く腰掛ける
(2)肩の力を抜いて、背筋を伸ばす(上半身をリラックスさせる)
(3)両手は軽くへその上に置く
(4)あごを引いて、まっすぐ前を向く
【呼吸トレーニング】
(5)まず、口からゆっくり息を吐く
呼吸というように「呼気」が先、「吸気」は後。吸うことより、吐くことから先に始める。腹に置いた両手で、横隔膜が上がり、腹がへこむのを感じながら、いま、肺の中にある息を吐き切るつもりで吐く。
(6)吐き切ったと感じたら、鼻から軽く息を吸う。
吐き切れば、自然に、スーッと息が入ります。同時に、横隔膜の緊張を解きます。自然に腹がふくらむのがわかります。空気を腹にまでため込んだように感じるはずです。
(7)吸った息をいったん止める。その後、口からゆっくり、一定の強さで吐く。
前記の(5)(6)(7)を繰り返す。
(8)次に、鼻と口の両方から一気に吸う。
音をたてないように注意する。ふだん、静かにしているときの呼吸は、吐く時間と吸う時間にはあまり差はないが、話をするときや読むときには、吸うときは短時間に一気に吸い、吐くのは、時間をかけてゆっくりと行う。口と鼻から一気に吸って、口からゆっくり息を吐く。吐き切る。腹のふくらみ、へこみを確認しながら繰り返す。
(9)吸った息をいったん止める。そのあと、口からゆっくり、一定の強さで吐く。
前記の(8)(9)を繰り返す。
(10)息を出すとき、「アー」と声を出す。
一定の大きさの声を、意味のまとまりに合わせて出し続けられるように、15秒くらいは続けられるようにするとよい。
(11)「アー」と10秒続けたら、一瞬息を止める。そのあと、また同じ強さで「アー」と続ける。
のどの周辺ではなく、胸や腹などいろいろな筋肉を使っていることが感じられるはず。呼吸をコントロールするというのは、必要に応じて吐く息を止めたり、吐き続けたりできるようにするほか、強く吐いたり、弱く吐いたりが思いのままできるようにすること。
(新版NHKアナウンスセミナー/NHKアナウンスセミナー編集委員会編より)
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