2016年12月13日火曜日

腹式呼吸

アナウンスに適した呼吸法は、横隔膜を上下させて行う腹式呼吸です。
横隔膜は胃や腸などの器官と肺や心臓などの器官を分けている膜です。この膜を上下させることで、のどに無用な緊張をしいることなく多量の息を吸ったり吐いたりできるのです。その上、横隔膜を動かす時に使う腹部の筋肉のほうが、胸式呼吸のときに使う胸の筋肉よりも意思のとおりに動かしやすいので、必要に応じてゆっくり息を吐いたりする呼吸のコントロールをしやすいのです。筋肉を鍛える腹筋のトレーニングではありません。急いでやろうとする必要はありません。以下のことに注意して、トレーニングを繰り返し、腹式呼吸をしっかり身につけることが大切です。
【姿勢】
(1)浅く腰掛ける
(2)肩の力を抜いて、背筋を伸ばす(上半身をリラックスさせる)
(3)両手は軽くへその上に置く
(4)あごを引いて、まっすぐ前を向く
【呼吸トレーニング】
(5)まず、口からゆっくり息を吐く
呼吸というように「呼気」が先、「吸気」は後。吸うことより、吐くことから先に始める。腹に置いた両手で、横隔膜が上がり、腹がへこむのを感じながら、いま、肺の中にある息を吐き切るつもりで吐く。
(6)吐き切ったと感じたら、鼻から軽く息を吸う。
吐き切れば、自然に、スーッと息が入ります。同時に、横隔膜の緊張を解きます。自然に腹がふくらむのがわかります。空気を腹にまでため込んだように感じるはずです。
(7)吸った息をいったん止める。その後、口からゆっくり、一定の強さで吐く。

前記の(5)(6)(7)を繰り返す。

(8)次に、鼻と口の両方から一気に吸う。
音をたてないように注意する。ふだん、静かにしているときの呼吸は、吐く時間と吸う時間にはあまり差はないが、話をするときや読むときには、吸うときは短時間に一気に吸い、吐くのは、時間をかけてゆっくりと行う。口と鼻から一気に吸って、口からゆっくり息を吐く。吐き切る。腹のふくらみ、へこみを確認しながら繰り返す。
(9)吸った息をいったん止める。そのあと、口からゆっくり、一定の強さで吐く。

前記の(8)(9)を繰り返す。

(10)息を出すとき、「アー」と声を出す。
一定の大きさの声を、意味のまとまりに合わせて出し続けられるように、15秒くらいは続けられるようにするとよい。
(11)「アー」と10秒続けたら、一瞬息を止める。そのあと、また同じ強さで「アー」と続ける。
のどの周辺ではなく、胸や腹などいろいろな筋肉を使っていることが感じられるはず。呼吸をコントロールするというのは、必要に応じて吐く息を止めたり、吐き続けたりできるようにするほか、強く吐いたり、弱く吐いたりが思いのままできるようにすること。

(新版NHKアナウンスセミナー/NHKアナウンスセミナー編集委員会編より)