2016年12月15日木曜日

母音の無声化

本来は声帯を振動させて発音する母音を、声帯を振動させないようにすることを「母音の無声化」といいます。
例えば、記録[kiroku]と発音するとき、[ki]の[i]は声帯が振動するのが普通ですが、期待[kitai]と発音するときの[ki]の[i]は声帯がしっかり振動せずに、口だけが[i]の形になっているのが普通です。のどに手を当てて確かめてみてください。
このように、母音の無声化は、音の結びつきの一定の決まりにしたがって、その母音の口構えだけを残して、聖地を振動させないことをいいます。ただし、ゆっくり一語一語切って発音すると無声化はしません。普通の速さで話すときに限り表れる発音現象ですが、歯切れのよさ、なめらかさなどにつながる利点もあり、共通語の発音の訓練として身につける意味があります。

●共通語の母音の無声化のきまり
(1)口の開きの小さい母音「イ」と「ウ」が無声子音にはさまれたとき、無声化します。無声子音というのは[k][s][∫][t∫][ts][h][p]です。

菊[kiku] くし[ku∫i] 月[tsuki] 薬[kusuri] (赤字が無声化する拍)

(2)無声子音のあとに続くイやウが語尾になって、しかも、その拍にアクセントがない場合も無声化します。

あります[arimasu] です[desu] 書く[kaku] 秋[aki] (赤字が無声化する拍)

(3)口の開きの大きいアやオも場合によっては無声化することがあります。主に[k]や[h]につづくアやオで、その拍にアクセントがない場合。

かかと[kakato] 九つ[kokonotsu] はかま[hakama] (赤字が無声化する拍)

●例外
(1)無声化する条件の拍がアクセントの拍と重なるとき、無声化しないことがあります。

使者[∫i∫a] 子孫[∫ison] 知識[t∫iiki] (赤字が無声化する拍、青字が無声化しない拍)

(2)無声化する拍が二つ続くとき、発音を明確化するために無声化しないことがあります。

聞きかじり[kikikadʒiri] 資質[∫iitsu] (赤字が無声化する拍、青字が無声化しない拍)

(3)語尾でも、アクセントに関係なく無声化しないものがあります。

渋谷区[shibuyaku] スパイク[supaiku] (赤字が無声化する拍、青字が無声化しない拍)

●例外の例外
(1)語尾が無声化する拍でも、その次に有声子音などの拍が続くと無声化しないことがあります。

ありますが[arimasuŋa] ですが[desuŋa] 書くもの[kakumono](青字が無声化しない拍)

(2)アクセントが来てもそのまま無声化するものがあります。

居つく[itsuku] 書記官[syokikan](青字が無声化しない拍)


(NHK‐CTI日本語センター 基礎から学ぶアナウンス (あなたを磨く話しことば) /半谷進彦・佐々木端 著より)